起業心理学では起業家精神の解明」は必要不可欠な重要項目です。この「起業家精神」については、現在下記のような面白い現象がみられます。

①「起業家精神」の必要性が叫ばれているわりには、その内容が明確になっていない。つまり、叫んでいる人も、それを聞かされている人も、実は、何が起業家精神なのかが共通の認識になっていない。

  だから
②「起業家精神」の「有無」や「強弱」「個人差」などを計りたくても、そのための尺度(基準)が確立されていない。

  だから
③「起業の成功要因と失敗要因」の解明が重視しされているわりには、起業家を目指す人の「起業家精神」の有無や強弱、個人差と、「起業家としての成功・失敗」の因果関係について証明できる研究事例が極めて少ない。

  そのためか
④他者に向かって「起業家精神を発揮せよ」と言う人は多いが、「自分は起業家精神を発揮している」と自覚している人は少ない

  そして
⑤「起業家精神」を研究している人の中には実際に「起業家体験」のある人が極めて少ない



 さらに、起業家精神の重要性を研究するときに、ちょっと気になる意外な事実があります。それは下記の5つです。


①「起業家精神の重要性」は、どのような組織で叫ばれているのか? 
 → それは一般の企業です。小さな会社ではなく大きな会社で叫ばれています。

②大企業では、どのような事態のときに叫ばれるのか?
 → 大企業になればなるほど、組織が「大企業病」に犯されるからです。

③大企業では、なぜ、それが叫ばれるのか?
  → 企業が「大企業病」になるのは会社の中で「サラリーマン根性」で行動する社員が増えるからです。

④大企業では、誰が、誰に向かって叫んでいるのか?
 → 社長が社員に向かって「起業家精神を発揮せよ」を叫んでいます。

⑤そう叫ぶ大企業の社長自身は起業家なのか?
 → 実はサラリーマンであって、本当の意味での起業家精神を発揮したことがない人なのです。


 以上述べた起業家精神に関する「5つの面白い現象」と「5つの意外な現象」から、「起業家精神とは何か?」ということを「サラリーマン根性」と対比して考えていくことも「起業心理学」なのです。

 なぜ、起業家精神をサラリーマン根性と対比して考えたほうがいいのでしょうか?

 なぜなら、日本の場合、殆どの起業家が、サラリーマンを経験して、そこで起業家精神を発揮したことによって、脱サラし、起業家になっていくからです。

つまり、「サラリーマン根性を克服する」から「起業家精神が発揮できる」のか? 

それとも「起業家精神を発揮する」から「サラリーマン根性を克服できる」のか?

  この両者の因果関係を解明することも「起業心理学」の課題なのです。