最近、急激に増えたと実感できるのは「成功した起業家」のメディア露出でしょう。ニュースでそのビジネスが紹介されるだけでなく、会社訪問、成功談義、コメント取材、豪邸拝見から起業家自身のニュースや経済番組への出演まで実に多種多様に登場しています。最近の代表例は言うまでもなくホリエモンです。

 いまでは、多くの「成功した起業家」がタレントのように顔と名前、キャラクターが一般大衆にまで知られるようになってきました。「芸能人」とまでは言われませんが、少なくとも「有名人」と言われることに違和感を持つ人はいなくなりました。

 しかし、その影で「失敗した起業家」の存在がなかなか見えていません。「隠されている」のではなく、「所在が分からない」か「当人が出たがらない」のです。

 その数は「成功した起業家」の数千倍、数万倍も存在しているのですが、「見えない」ことによって「起業しての失敗する人は少ない」という誤った事実認識が普及していくとしたら、それは危惧すべきことかもしれません。

 その点、ホリエモンに関しては、「実像」も「虚像」もこれからかなりのことが露呈されようとしています。

 成功した実例として「見えている起業家」にも、見えないコトがあります。
それは、その人が起業した経緯、起業してから成功するまでの紆余曲折の真相です。

 成功した(あるいは成功を装っている)起業家は、やがて自分の起業体験を本にすることになります。当人が書くか、口述したものをライターが原稿にするかは、人によって異なるでしょうが、いずれにせよ、その本にかかれることになる内容は、大別すると下記の通りのものが多いでしょう。


    ①起業する前の自分(生い立ち、学歴、最初の就職・・・)
    ②ビジネスを始めた経緯(発心・事業プランの発想・起業の準備・・・)
    ③起業してから成功するまでの道のり(障害・困難・失敗・試練・・・・)
    ④ビジネスの現状と将来展望(会社の将来・経営ビジョン・個人的な夢・・・)
    ⑤当人が分析した成功要因(先見性・直感・信念・信条・努力・幸運・・・)
    ⑥これから起業する人へ(激励・注意・警告・アドバイス・・・・)


 しかし、これらは、あくまでも「公表できる範囲」のことです。彼らでは言えないこと、書けないことがあります。それは「隠していること」もあるでしょうが、彼ら自身が「気づいていないコト」「自覚してはいないコト」もあるのです。

それらの「隠しているコト」をどのようにして表面化するか?
そして「当人が自覚していないコト」をどのようにして言語化させるか?
それが起業心理学の大きな研究課題なのです。